グリーンブック

ピーター・ファレリー、2018。差別をいろんなパターンを用いて描いていて、特に黒人のなかでのピアニストの絶対的な孤立は興味深かった。しかし社会派ドラマでもなく、ファレリー特有の破天荒なコメディでもなく、どれも中途半端な印象を受けた。この映画がピアニストとドライバーの友情物語となってしまっていると感じたのは映画の望むところなのだろうかと考えさせられた。まあ映画はよくできている。あまり見かけないアスペクト比だった。95点。

赤い砂漠

ミケランジェロ・アントニオーニ、1964。この映画は個人的にはアントニオーニのベスト3には入る映画だと思っていたので、数十年ぶりに見てみたのだが、体調が悪かったせいかどうも印象が異なっていて、アントニオーニすげえとはならなかったのでもう一度見る必要がある。95点。

都会の女

F・W・ムルナウ、1930。1927年の名作『サンライズ』と似ているといえば似ている。この映画は陰と陽がくっきりと分かれているのだが、とりわけ素晴らしいのは陽の部分で、そのなかでも陽のラスト、地元ミネソタの麦畑に花嫁と戻る移動撮影は、映画史に残る瞬間だと思う。光と影を使った描写も素晴らしく、扉の使い方に特化した作りも効果的だった。列車の撮影も際立っている。シカゴとミネソタの対比と類似の反復描写も素晴らしい。100点。

レディ・バード

グレタ・ガーウィグ、2017。地元うぜーサクラメントうぜー東部行きてーとか言っておいて、サクラメント愛がにじみ出まくっている映画。家族愛と地元愛とか友情いうマンネリ化した題材を若い感性で切り取っておりとても新鮮な気分で見られた。とても愛おしい映画で、二回連続で見てしまった。演者ではシアーシャ・ローナンが素晴らしすぎた。100点。

シヴィリゼーション

トーマス・H・インス、1916。サイレント映画の黄金期は1916-28年位だと言われている。これは初期の大作でダイナミックな映画になっている。とにかく大勢の人がわんさか動いている。半透明なキリストが出てきたり国王も半透明になったりする。結局は第一次大戦機に平和条約を締結しようというメッセージが込められているのだと思う。この映画は小津が影響を受けたということで見たのだが、その影響はよくわからなかった。90点。

アイリッシュマン

マーティン・スコセッシ、2019。Netflix映画。これはNetflixを解約する前に見とかにゃならん映画だったから見た。中心となる演者が年を取りすぎているのもネックだったし、原作や史実に忠実にした結果だと思うのだけれど、少しわかりにくい部分があった。あとは尺が長すぎて終わりの頃には最初の方を覚えていなかった。スコセッシは切れのある演出を見せており名シーンがたくさん見られた。2度続けて見たものだから頭が疲れまくっている。95点。

もう終わりにしよう。

チャーリー・カウフマン、2020。Netflix。カウフマンはもともと苦手なのだが、これは苦手なカウフマン決定版的な仕上がりになっていた。インテリ会話の字幕に追いつけず、奇妙な世界に乗り切れず、半分くらいしか内容を理解できなかった。でもこういう売れなさそうな映画は配信サイトが得意とするところなので、時代は良い方向に向かっていると実感した。90点。