グリーンブック

ピーター・ファレリー、2018。差別をいろんなパターンを用いて描いていて、特に黒人のなかでのピアニストの絶対的な孤立は興味深かった。しかし社会派ドラマでもなく、ファレリー特有の破天荒なコメディでもなく、どれも中途半端な印象を受けた。この映画が…

赤い砂漠

ミケランジェロ・アントニオーニ、1964。この映画は個人的にはアントニオーニのベスト3には入る映画だと思っていたので、数十年ぶりに見てみたのだが、体調が悪かったせいかどうも印象が異なっていて、アントニオーニすげえとはならなかったのでもう一度見…

都会の女

F・W・ムルナウ、1930。1927年の名作『サンライズ』と似ているといえば似ている。この映画は陰と陽がくっきりと分かれているのだが、とりわけ素晴らしいのは陽の部分で、そのなかでも陽のラスト、地元ミネソタの麦畑に花嫁と戻る移動撮影は、映画史に残る…

レディ・バード

グレタ・ガーウィグ、2017。地元うぜーサクラメントうぜー東部行きてーとか言っておいて、サクラメント愛がにじみ出まくっている映画。家族愛と地元愛とか友情いうマンネリ化した題材を若い感性で切り取っておりとても新鮮な気分で見られた。とても愛おしい…

シヴィリゼーション

トーマス・H・インス、1916。サイレント映画の黄金期は1916-28年位だと言われている。これは初期の大作でダイナミックな映画になっている。とにかく大勢の人がわんさか動いている。半透明なキリストが出てきたり国王も半透明になったりする。結局は第一次大…

アイリッシュマン

マーティン・スコセッシ、2019。Netflix映画。これはNetflixを解約する前に見とかにゃならん映画だったから見た。中心となる演者が年を取りすぎているのもネックだったし、原作や史実に忠実にした結果だと思うのだけれど、少しわかりにくい部分があった。あ…

もう終わりにしよう。

チャーリー・カウフマン、2020。Netflix。カウフマンはもともと苦手なのだが、これは苦手なカウフマン決定版的な仕上がりになっていた。インテリ会話の字幕に追いつけず、奇妙な世界に乗り切れず、半分くらいしか内容を理解できなかった。でもこういう売れな…

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 前篇・後篇

樋口真嗣、2015。アニメにハマってしまい映画も見たのだが、これはヒドかった。脚色からして大いに飛躍させているように見えるのだが、それでいて原作に縛られてしまっている。前篇は特にヒドかった。カメラも人も動いてばかりで落ち着きがない。そして決め…

オールド・ガード

ジーナ・プリンス=バイスウッド、2020。死ねなくなってしまった戦士たちの物語。不死身の快進撃を見せつけるような映画ではなく、不死身であることはかなりネガティブに捉えられている。さらには寿命もあるらしくて、シャーリーズ・セロンはどうももうすぐ…

ボヘミアン・ラプソディ

ブライアン・シンガー、2018。クイーンの伝記映画。クイーンには特に思い入れはない。この映画は劇場でこそ真価を発揮する映画だと思った。複雑なストーリーや小細工などは排して、職業監督のようにブライアン・シンガーは撮っているのだがそこがいい。音楽…

ミス・アメリカーナ

ラナ・ウィルソン、2020。Netflix。テイラー・スウィフトのドキュメンタリー。なんてことはないドキュメンタリーなのだが、子供の頃のビデオ映像がちゃんと残っていて、これが20年後のアーティストになってくるとスマホのせいで誰でも撮影者になるってことで…

グッド・タイム

ジョシュ・サフディ、ベニー・サフディ、2017。『アンカット・ダイヤモンド』の監督の作品。いきあたりばったりに物語が展開し、キャラクター描写は放置されることもある。特に16歳の女はもっと使いようがあると思う。でもそういうキャラクタライズはほとん…

探偵はBARにいる3

吉田照幸、2017。おなじみのシリーズ物。いままでのが好きであればまあ楽しめるのではないかと思う。いままでのがイマイチだったり、この映画単体として見たときには不甲斐なさが残ると思う。見る者の好奇心を誘うようなプロットなどは見られないし、全部説…

CURE キュア

黒沢清、1997。この映画は公開当時に劇場で見てよくわからなかった。一緒に見た友人は大傑作だと興奮していた。だからもう一度見たのだが、やっぱりよくわからなかった。サイコサスペンスのようなドラマなんだけど、現実味のある人がドライに人を殺すから面…

きみの鳥はうたえる

三宅唱、2018。この映画は佐藤泰志の原作なのだが、映画化すなわち傑作というのがまたも証明された。柄本佑、石橋静河、染谷将太による青春映画。寄りの画が非常に多くって、顔の映画になっている。3人のキャラクター造形が見事で、とりわけ柄本佑と石橋静河…

寝ても覚めても

濱口竜介、2018。なんだかスケール感のある演出に圧倒された。そんなに大した事件などが起こるわけでもないのに、ワクワクドキドキしながら映画に見入ってしまった。ただストーリーの決定的な部分、東出昌大を追っかけちゃう部分があまり理解できなくて残念…

恋は雨上がりのように

永井聡、2018。昨日見た『勝手にふるえてろ』は変化球バリバリ使っていた映画だけれど、この映画はかなりの直球勝負で、そこに物足りなさを感じた。爽やかな青春ラブストーリー。そしてそれを維持させた大泉洋の物語も描かれていておもしろい。よくできたス…

勝手にふるえてろ

大九明子、2017。オリジナルではないことは容易に想像がついたのだが、てっきり漫画原作だと思っていた。でも綿矢りさの小説が原作と見終えてから知り、原作を読みたくなった。それくらいにこの映画は自由な展開を見せる。前半は本当にワクワクした。でも中…

新聞記者

藤井道人、2019。こういう社会派映画をやらせたらやっぱアメリカだよなあと痛感した。あと韓国もこの映画よりは上のものが多くある。まず脚本がどうなんだろうという疑問が残る。もしくは演出が悪いのかもしれない。サスペンス調なのにどうも鈍い映画に思え…

マリッジ・ストーリー

ノア・バームバック、2019。主演のふたり、スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライヴァーがもう本当に素晴らしい。長いシーンなんかでは特にふたりの本領が発揮されていて、素晴らしい長回しもあるのだが、カットを割っていてもきっと長回しの一発撮りで…

i -新聞記者ドキュメント-

森達也、2019。東京新聞の社会部記者、望月衣塑子を追ったドキュメンタリー。望月のエネルギーには恐れ入るのだが、ちょっと追っかけドキュメンタリーに傾倒してしまっていて、本来あってほしいと願っていた森達也独特の視点というのはあまり感じられなかっ…

13th -憲法修正第13条-

エバ・デュバーネイ、2016。Netflix映画。BLMを知るたの映画としては最適なのではないかと思う。時系列に沿って黒人差別の歴史が説明されていくのだが、例えば公民権運動なんかはほとんど扱わない。現代までずっと形を変えて生き続ける奴隷制度とそのシステ…

荒野の用心棒

セルジオ・レオーネ、1964。黒澤明の『用心棒』をごっそり引用したパクリ映画。黒澤明とセルジオ・レオーネの演出のちがいなど、見るべきところはたくさんあったのだが、所詮は娯楽活劇というわけで、普通に楽しみながら見てしまった。マカロニウエスタンを…

用心棒

黒澤明、1961。痛快娯楽作品。登場人物のキャラ立ちもいい。もちろん三船はすばらしいのだが、東野英治郎がよかった。いつもはうるさい演技に辟易することもある遠野だが、この映画では素晴らしい助演をしていた。あとは仲代達矢と加東大介の凸凹兄弟も素晴…

昼下りの決斗

サム・ペキンパー、1962。ペキンパーの出世作にして『ワイルド・バンチ』などと並ぶ代表作のひとつ。カメラ演出がちょっと無駄にやりすぎな印象もあるのだが、銃撃戦などはさすがのペキンパーという感じ。そこに脇役だがウォーレン・オーツが出てくると画に…

周遊する蒸気船

ジョン・フォード、1935。南部の船のナンセンスコメディ。トーキーなのだが、サイレント映画の傑作のような素晴らしい出来栄え。とにかく画面に満ち溢れるエネルギーの高さ。あらゆるいいかげんさと、優しさに恋をしてしまうような映画だった。主演のウィル…

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

スタンリー・キューブリック、1964。ブリティッシュなブラックユーモアについていけず。しかし一人三役のピーター・セラーズ劇場としては申し分なし。やはり特にドクター・ストレンジラヴは強烈だったし、彼からラストへと流れるところなんかはすごくかっこ…

裁かるるジャンヌ

カール・テオドア・ドライヤー、1928。この映画は、本来のリアリティを獲得するために、映画的なリアリティを排除して作られている。ジャンヌに対する接写の連発。ローアングルからの登場人物のパンの連発。そしてときおり見せる空間認知を惑わせる反転ショ…

早春

イエジー・スコリモフスキ、1970。まず、東欧の映画によく見られるような、赤や緑や黄色を配色したポップな映像が目を引く。中でもやはりジェーン・アッシャーの黄色のレインコート。このレインコートで映画の色は決定的になったと思う。映像はすごくむき出…

情婦

ビリー・ワイルダー、1957。アガサ・クリスティ原作。芝居の流れが非常に早く手際がよい。当然セリフも早くなってまったく字幕には追いつけなかったけれど、看護婦とチャールズ・ロートンが織りなす喜劇が最高にキレッキレで面白すぎた。この映画は最後に大…