木と市長と文化会館 または七つの偶然

エリック・ロメール、1992。ロメールにしては珍しく恋愛よりも政治的な映画といえるが、それでも演者はロメール映画らしく喋りまくっている。でも喧々諤々というよりただ喋りまくる。フィクションとドキュメンタリーのあいだをする抜けるような作りになっており、見ているとフランスの郊外の自然に感動するように、動物にも、人間にも感動してしまうのだ。このロメール独特の空気感というのはもはや魔術のようで、飄々とした時間を共にするのがとても気持ちよかった。出色の出来だったのは校長ファブリス・ルキーニの娘と市長の会話。そのアングルとアンサンブル。なんと感動的なことかと思った。そしてミュージカルなんてカマしちゃうんだから、もう参りましたとしか言いようがない。子供撮るのうまいし大人撮るのもうまいし、多分素人が出てるけどその撮り方なんて飛び抜けている。ロメールのなかでも最高クラスの一本。100点。