裁かるるジャンヌ

カール・テオドア・ドライヤー、1928。この映画は、本来のリアリティを獲得するために、映画的なリアリティを排除して作られている。ジャンヌに対する接写の連発。ローアングルからの登場人物のパンの連発。そしてときおり見せる空間認知を惑わせる反転ショット。ロングショットはめったにないし、シーンの説明ショットもない。ショットとショットの時間的物質的なつながりもない。特に特異な撮影方法は映画空間を抽象化することで、映画が本来持っているリアリティを圧し殺すことに成功している。そしてジャンヌ。サイレント映画はときとして、登場人物が遠くに感じられることが多いのだが、ジャンヌはべらぼうに近い。映画というのはリアリティを生じさせるのが難しい媒体だと思うのだが、この映画は映画の枠組みを抽象化したり解体することで、ジャンヌはかなりのリアリティを獲得している。なにせドライヤーだから何度も見なければわからない部分が多いのだが、久しぶりにパンチのある映画に出くわした。100点。