オールド・ガード
ジーナ・プリンス=バイスウッド、2020。死ねなくなってしまった戦士たちの物語。不死身の快進撃を見せつけるような映画ではなく、不死身であることはかなりネガティブに捉えられている。さらには寿命もあるらしくて、シャーリーズ・セロンはどうももうすぐ死ぬらしい。どうしても陰鬱なムードの中で話は進むのだが、シャーリーズ・セロンは今作でも絶好調である。カッコいいという概念には男性なんか必要ないんじゃないかってくらいにカッコいい。そしてアクションも相変わらず素晴らしい。もう少し不死身であることの面白さを描けると良かったと思う。続編もやる気みたいだから楽しみにしている。90点。
ボヘミアン・ラプソディ
ブライアン・シンガー、2018。クイーンの伝記映画。クイーンには特に思い入れはない。この映画は劇場でこそ真価を発揮する映画だと思った。複雑なストーリーや小細工などは排して、職業監督のようにブライアン・シンガーは撮っているのだがそこがいい。音楽の力を信じ切って撮っている感じがすごく伝わってきた。でも生ぬるい映画だなという印象は拭い去れなかったけれど、最後のライブエイドで見事に印象は覆された。クイーンの音楽にはまるで興味がなくてもあのライブエイドは感動的だった。あざとい演出などがないところが素晴らしい。95点。
ミス・アメリカーナ
ラナ・ウィルソン、2020。Netflix。テイラー・スウィフトのドキュメンタリー。なんてことはないドキュメンタリーなのだが、子供の頃のビデオ映像がちゃんと残っていて、これが20年後のアーティストになってくるとスマホのせいで誰でも撮影者になるってことで、これからドキュメンタリーの世界の過去映像はどんどん変わっていくのだなあと感じた。あとは過去のパブリックな映像なんかは全部YouTubeに上がってるから、こちらも変化が必要になってくる。この映画では、太った問題、カニエ問題、政治問題などよく知られたネタを振り返ったりする。どれも真摯に答えていた。曲を作りながら話が流れていくところが素敵だった。90点。
グッド・タイム
ジョシュ・サフディ、ベニー・サフディ、2017。『アンカット・ダイヤモンド』の監督の作品。いきあたりばったりに物語が展開し、キャラクター描写は放置されることもある。特に16歳の女はもっと使いようがあると思う。でもそういうキャラクタライズはほとんど排除されており、そもそも主人公ロバート・パティンソンと一番長くいる、間違えられた男すらもキャラクタライズされる描写は少ない。クレジットカード女もしかり。そういう殺伐とした感じはノンストップスリラーとしての体裁を見事に保っており、映像と編集もそれに呼応している。散らばらせたプロットの回収なんてことは端からする気はなく、ひたすら思い通りにならない状況に主人公をさらしつずけるのは、とてもいさぎよく思えた。95点。
探偵はBARにいる3
吉田照幸、2017。おなじみのシリーズ物。いままでのが好きであればまあ楽しめるのではないかと思う。いままでのがイマイチだったり、この映画単体として見たときには不甲斐なさが残ると思う。見る者の好奇心を誘うようなプロットなどは見られないし、全部説明をかぶせてくるあたりは、テレビドラマでも見ているような感覚だった。役者は馴染みのメンツは予想通りの好演をしていた。しかしいわゆるゲスト陣はバラツキがあった。シリーズのなかで物語の起伏は一番なく、二時間超が少し長く感じられた。90点。